散骨とは、「最期は自然に還りたい」「お墓は必要ない」と望む人たちから注目されている葬送のスタイルです。遺骨を自然に還す自然葬の一つであり、墓石のない供養のかたちです。

散骨にはさまざまなタイプがありますが、代表的なものは海に遺灰を撒く「海洋葬」、里山の森林に散骨する「樹木葬」があります。

一般的なお墓に比べて費用を安く抑えられるのもポイントですが、お墓と何が違うのか? 具体的な散骨の流れやルールなど、よく知られていない部分もあります。

今回は、散骨とは何かをはじめ、散骨の具体的な進め方、メリットとデメリット、費用について詳しく解説します。

散骨とは?

「散骨(さんこつ)」とは、故人の遺骨すべて、あるいはその一部を海、山、川、湖、砂漠、空、宇宙空間などに撒く、お墓によらない葬送および供養のスタイルです。
遺骨を自然に還すことから「自然葬(しぜんそう)」とも呼ばれています。

よく知られるものは、海に遺灰を撒く「海洋葬(海洋散骨)」、カプセルに納めて宇宙へ打ち上げる「宇宙葬」、「樹木葬」では自然の里山や森林全体が墓地になっている敷地内に散骨するスタイルがあります。

散骨は江戸時代の中期で、死者の魂を自然に還すという風習から、日本でも一般的に行われていました。
ヒンズー教では、いまも亡くなった人の遺灰を海や川に散骨するのが普通です。米国でも、ほとんどの州で散骨を合法化しています。

戦後の日本では、「埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行つてはならない」(墓地、埋葬等に関する法律)、「死体、遺骨、遺髪、または棺内に蔵置した物を損壊、遺棄または領得した者は、三年以下の懲役に処する」(刑法190条)に触れるという解釈から、長年にわたって散骨は違法とされてきました。

1991年「NPO法人 葬送の自由をすすめる会」が、火葬された遺骨を粉骨して海や山へ還すことを「自然葬」と名付けて活動を始めると、法務省が非公式ながらも「(散骨が)葬送のための祭祀で、節度をもって行われる限り問題はない」という見解を示し、以降、散骨は新しい葬送と供養のかたちとして定着しています。

有名人の散骨については、俳優の石原裕次郎さんの遺灰が湘南の海に、漫才師の横山やすしさんは広島県宮島競艇場、X JAPANのhideさんは米サンタモニカの沖に散骨されました。また女優の沢村貞子さんは、ご主人の遺灰と一緒に相模湾に散骨されています。

海外を見ると、マハトマ・ガンディーさんの遺灰はインドのガンジス河に、アルベルト・アインシュタインさんは米デラウエア川、オペラ歌手のマリア・カラスさんはエーゲ海、ロックバンドQueenのフレディ・マーキュリーさんの遺灰は、スイスのレマン湖に散骨されたといわれます。

散骨の種類

散骨は、故人の遺骨を自然に還す「自然葬」に分類される葬送と供養のスタイルです。

故人の遺骨すべて、あるいはその一部を遺骨と分からないパウダー状まで「粉骨(ふんこつ)」して、遺灰を海、山、川、湖、空などに撒くので、跡継ぎがなくても契約できるのも特徴です。

海洋葬(海洋散骨)                          

海洋葬とは、故人の遺灰を海洋に散骨する葬送および供養のスタイルです。

遺族が乗る船舶をチャーターし、散骨が可能な海域に移動してから行います。散骨の際、海上に大量の花束や故人の遺品などを投下するのは禁止されています。

海洋葬を専門業者に依頼するときは、個別に船をチャーターする「個別海洋散骨」と、複数の遺族が船舶に乗り合わせる「合同海洋散骨」、散骨を業者に委託する「委託海洋散骨」があります。

散骨を海岸や砂浜で行うことは禁止されています。また、海岸から離れていても漁場や養殖場が近くにある海上には散骨できません。

樹木葬

樹木葬とは、「自然や草花に囲まれて眠りたい」と望む人たちから注目される埋葬のスタイルで、近年、女性を中心に人気が高まっています。

墓石などの人工物を置かず、霊園や墓地の一定区画に遺骨を埋葬する永代供養タイプ。シンボルツリーの下に骨壺や骨袋に入れて埋葬するタイプ。粉骨して自然の里山や森林に自然葬として散骨するタイプがあります。

散骨するタイプの樹木葬では、里山や森林の保護・維持のために年間管理費が発生する場合があります。

空葬

空葬とは、想セスナ機やヘリコプター、飛行船などをチャーターして、故人の粉骨を空から散骨する供養のスタイルです。

国土が広い米国では、故人が所有する広大な牧場や農場などで、空から散骨することは珍しくありません。

しかし、日本で空からの散骨が許可されるのは、公海上や人家のある生活圏から遠く離れた国有林に限られています。多くは自宅や故郷の上空を旋回してから、散骨が許される場所まで飛行して行います。

空葬を希望する場合は経験豊富な専門業者、法規や手続きに明るい団体への相談をおすすめします。

宇宙葬 

宇宙葬とは、故人の遺骨を宇宙空間に打ち上げて散骨する供養の方法です。

宇宙葬にはいくつかのスタイルがあります。特殊なカプセルにごく少量の粉骨を納めて、ロケットに乗せて大気圏外に打ち上げる宇宙葬は、「地球周の回軌道を回る」「月面に着陸する」「遙か宇宙空間に旅立つ」などのプランがありますが、費用は高額になります。

特殊なバルーンの中に粉骨を納めて打ち上げるバルーン宇宙葬は、高度30~35km(成層圏)付近で気圧によりバルーンが破裂することで散骨されます。いずれの宇宙葬も生前契約を推奨しています。

こんな人におすすめ

人によって、散骨を選ぶ理由は様々ですが以下のよう要望が多いようです。

  • 自然に還りたい
  • 大好きな海で眠りたい
  • 狭くて暗いお墓に入りたくない
  • 死んだ後まで”家”に縛られたくない
  • 配偶者と同じお墓に入りたくない
  • お墓の継承者がいない
  • 家族やパートナーに迷惑をかけたくない
  • お墓はいらない

また遺骨のすべてを散骨するのではなく、故人の願いを叶えてあげたい遺族が、遺骨の一部を散骨して、あとは先祖代々のお墓に納骨する場合もあります。
実際、散骨全体にしめる割合は、こちらの一部散骨が多いようです。

散骨はどこで出来る?

法律や条例に従うことで散骨は行えます。逆に言えば、誰でも好き勝手に散骨を行えるわけではありません。

散骨に際して、遺骨を必ず「粉骨」しなければなりません。

遺骨をそのまま撒くと「死体遺棄罪」に問われます。それが自分の土地であっても、墓地以外の場所に遺骨のまま散骨・埋葬するのは違法行為です。誰かが遺骨を見つけて警察に通報すると事件になります。

海、山、川、湖などに散骨する場合も、人家が近くにある場所は「迷惑防止条例」、水源である川や湖に散骨すれば「水質汚濁防止法」に問われます。海洋上であっても漁場や海上交通の要所での散骨は、「海洋汚染防止法」違反になります。

散骨のルールとマナーを守りトラブルを回避するためにも、散骨は自分の判断で行わず、法規や手続きに明るい専門業者や団体に相談しましょう。

散骨のメリットとデメリット

散骨は、自然と一体感を求める人、死後は自然の大きな循環のなかに還るという死生一如の死生観をもつ人たちに選ばれています。

「お墓はいらない」「お墓の継承者がいない」「宗教による葬儀や供養をしたくない」「家族に迷惑をかけたくない」など、葬送や供養に対する考え方、経済的な理由から散骨を選ぶ人もいます。

但し、散骨が安上がりな葬儀と考えるのは間違いです。火葬費用をはじめ、遺骨を粉骨する費用、散骨が許可された洋上や里山に向かうためには交通費もかかります。

散骨のメリットとデメリットをよく把握して、故人にとっても遺族にとっても満足できる選択をすることが大切です。

散骨のメリット

散骨を選ぶ一番のメリットは、「最期は自然に還りたい」と願う故人の願いをかなえる、自然の大きな循環の中に回帰する葬送であることでしょう。

散骨は跡継ぎがいなくても契約できます。遺骨のすべてを散骨した場合、お墓や納骨堂などの費用もかかりません。お墓の掃除や墓石のメンテナンスも必要ありません。

散骨タイプの樹木葬は、宗教法人が運営しているもの以外は、宗教・宗派を問わず契約できます。年忌法要、お盆やお彼岸などお寺とのお付き合いもありません。

お墓を持ちたくない人、お墓を継承する家族や子どもがない人、亡くなった後まで「家」に縛られたくない人などは、散骨に大きなメリットを感じるでしょう。

散骨のデメリット

散骨で最も注意したいのは、遺骨を一旦散骨してしまうと、二度と取り戻すことができない点です。

海洋散骨や公営墓地の樹木葬では、僧侶を呼んで法要が行えない場合があります。寺院が経営する墓地では、他の宗派の僧侶を呼んで法要はできません。

あまり遠方の樹木墓地を選ぶと、遺族が高齢になるにつれ参拝に行けないこともあります。散骨した場所に定期的に参拝したいと考えている場合はアクセスも考慮しましょう。

自然に還るイメージが先行しがちな散骨ですが、さまざまな制約があるのも事実です。契約する前に専門業者とよく相談して、散骨する場所が限定しているときは必ず現地を訪れてから判断することが肝要です。

散骨で注意すべきこと

■まわりの理解を得る

遺骨を自然に還す散骨は、故人の遺骨が残らないことや墓石がないことから、伝統や格式を重んじる人には受け入れられないことがあります。家族の誰とも相談せず散骨を申し込んで、本人の死後にトラブルになるケースもあります。
自分の遺骨を散骨したい方や家族が散骨を望んでいる場合は、よく話し合ってから決めましょう。

■遺骨は還ってこない前提で

散骨した遺骨は自然に還るので取り戻すことは不可能です。後になって、遺族がお墓を建てたいと思ったり、何らかの事情で分骨が必要になっても、手元に遺骨が残っていないので困ることがあります。そんな時のために、遺骨の一部をミニ骨壺などに入れて自宅で「手元供養(てもとくよう)」する方法もあります。

■樹木墓地は年月が経過すると景観が変化する

自然の里山や森林全体が墓地になっているタイプの樹木墓地は、遺骨を自然の状態に還すことが優先されるので、年月の経過によって墓地の景観が大きく変化することがあります。森林の状態によっては、一年も経たないうちに散骨した場所すら分からなくなります。遺骨の埋葬場所を特定したい方は散骨ではなく、公営墓地や民営墓地の一区画にシンボルツリーを植えたタイプの樹木葬を選ばれるとよいでしょう。

散骨はいくらかかる?

「葬儀やお墓にお金をかけたくない」とい理由で散骨を希望する方がいらっしゃいます。しかし、散骨が安上がりな葬送と考えるのは早急すぎるでしょう。

散骨をするためには遺体を火葬しなくてはいけません。

火葬場の予約と火葬の手配は葬儀社を介して行うのが一般的です。葬儀を行わず火葬だけの「直葬(火葬式)」を依頼した場合、首都圏で直葬の平均費用は約45万円。どんなに安くても15万円程かかります。

さらに、焼骨をそのまま散骨するのは違法なので。必ず「粉骨(パウダー状)」する必要があります。その粉骨費用に3万円前後かかります。

散骨が許可されている場所に向かうための交通費もかかります。樹木葬であれば永代供養料や年間維持費が必要になるでしょう。海洋葬でフェリーや客船から海へ散骨するのは違法です。専用の船をチャーターするための費用がかかります。宇宙葬にも打ち上げ費用や粉骨を入れる特殊容器の費用があります。

すべての遺骨を散骨した場合、お墓や納骨堂の費用はかかりません。但し、それだけの理由で散骨を選ぶのは間違いのもとです。

散骨はあくまでも大切な方の遺志を尊重し、新たな旅立ちを願って大自然へ送りだす崇高な葬送のスタイルです。安易な気持ちで選ぶと違法やトラブルの原因になりかねません。

散骨の流れと必要な手続き

遺骨を散骨する葬送は、生前に本人が契約するパターンと、遺族が故人の遺志に従って契約するパターンとに分かれます。

海洋葬、樹木葬、宇宙葬など、葬法に違いはあっても、確認するポイントは基本的に同じです。

インターネットで希望する葬送を行っている専門業者や団体、過去に自然葬の実績がある葬儀社の情報サイトで情報を収集し、条件に合うものが見つかったら、まず電話などで問い合わせましょう。

散骨・自然葬の流れとチェックポイント

■条件・希望で探す

「跡継ぎ(承継者)の有無」「お住まいのエリア」「交通手段(立地)」「ご希望の環境(自然環境、お参りしやすさ、明るいイメージなど)」「管理体制(経営状態)」「予算」といった条件・希望から絞り込みます。

■交通手段やアクセスは重要

樹木葬で散骨する場合は、自然環境にばかり目が行きがちです。しかし、遺族や跡継ぎの方が里山の森林を訪れることも考えられます。お住まいのエリア、最寄り駅、利用している交通手段からの距離、車や電車などでの行きやすさ、駐車場の有無などもチェックしましょう。運営法人に電話連絡して、気になることは何でも質問しましょう。

■現地には必ず足を運んで見学する

海洋葬は散骨する海域まで船で向かうことになります。あまり小さい船であったり、頻繁に海が荒れる海域では、高齢な遺族の体力が持ちません。また、樹木墓地の景観は季節によって変化します。さらに年月が経過することで周辺環境も大きく変わることもあります。条件に合う専門業者や団体が見つかったら必ず現地に足を運び、実際に見学することが大切です。家族がいる場合は一緒に行くのもおすすめです。

■納得できる「専門業者」「団体」「運営法人」が見つかったら契約

すべてのポイントをチェックして疑問や質問が解決したらいよいよ契約です。散骨・自然葬の依頼先に契約申し込み費用を払います。樹木墓地などの場合は「墓地使用許可証(永代使用書)」が発行されます。

■散骨にも「埋葬許可書」は必要

お墓に埋葬しない散骨ですが、「埋葬許可書」は必要です。埋蔵許可証とは、火葬した遺骨をお墓に納骨するときに必要な書類です。火葬場が火葬したことを証明する署名、押印があり、収骨後に火葬場の職員から受け取ります。火葬後の遺骨を複数に分けて、その一部だけを散骨する場合は「分骨証明書」が必要になります。火葬した火葬場のある市区町村で発行してもらいます。

■散骨と法要

当日は、契約した散骨・自然葬の形式にしたがって葬送します。散骨を希望される方すべてが無宗教であるとは限りません。散骨の際に法要を営んだり、僧侶に読経してもらうには依頼する必要があります。契約先で僧侶を手配してくれる場合もあるので、事前に確認しましょう。

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一口に散骨と言っても、それを行う場所は、海、山、川、湖、砂漠、空、宇宙まで実にさまざまです。
故人の遺骨すべてを散骨する場合と遺骨の一部を散骨する場合とでは、その後の供養・法要なども違ってきます。

散骨・自然葬をご希望のお客様をサポートするために、専門の相談員が【無料】で、【回数の制限なく】アフターサポートしてくれる葬儀社を選ぶことが、悔いの残らない葬送をするために大切です。

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まとめ

・「散骨」とは故人の遺骨すべて、あるいはその一部を海、山、川、湖、空、宇宙などに撒く、お墓のない葬送および供養のスタイル

・散骨に際して遺骨を必ずパウダー状に「粉骨」する必要がある。

・自分の土地であっても遺骨をそのまま撒くと「死体遺棄罪」に問われる。

・海洋であっても漁場や海上交通の要所での散骨は禁止されている。

・遺骨を一旦散骨すると、二度と取り戻すことができない。

・伝統や格式を重んじる人には、散骨が受け入れられないこともある

・散骨タイプの樹木墓地の景観は、年月の経過によって大きく変化することがある。

・散骨にも「埋葬許可書」が必要。一部の遺骨だけ散骨する場合は「分骨証明書」が必要。

・散骨(自然葬)を検討する際は、葬送、葬儀、供養、墓地などの知識と経験豊富な専門相談員が無料で回数の制限なくアフターサポートをしてくれる葬儀社がおすすめ。

よくある質問

  • 散骨とはどのようなものですか?

    「散骨(さんこつ)」とは、故人の遺骨すべて、あるいはその一部を海、山、川、湖、砂漠、空、宇宙空間などに撒く、お墓によらない葬送および供養のスタイルです。
    遺骨を自然に還すことから「自然葬(しぜんそう)」とも呼ばれています。
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  • 散骨にはどのような種類がありますか?

    故人の遺骨すべて、あるいはその一部を遺骨と分からないパウダー状まで「粉骨(ふんこつ)」して、遺灰を海、山、川、湖、空などに撒くので、跡継ぎがなくても契約できるのも特徴です。
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  • 散骨はどのような人におすすめですか?

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